268、後見と預金管理

2020年08月31日

岡田伸子さん(63)は、先日亡くなった伸子さんの母、
伊藤ヨシノさん(95)の相続のことで相談に来ました。

 ヨシノさんは7年前から認知症を患っており、岡田夫妻はヨシノさんの在宅介護に
尽くされていたということです。
 岡田夫妻は、病院のポスターなどで後見制度の存在はなんとなく知っていましたが、
「難しいことは苦手」と申立てをせずにお世話をしていたとのことです。

 以前、「家族が認知症になり、家庭裁判所で手続きをしないと預金が下ろせなくなった」
という近所の方の体験談を伝え聞いて以来、伸子さんはヨシノさんの約1,000万円の預金全額を、
数年間で伸子さん名義の口座に移し替えたそうです。

 しかし、移し替えた伸子さんの口座は、伸子さんの自己資金とヨシノさんの資金の
区別のつかないものでした。
 不正にお金を使ったことはなかったそうですが、ヨシノさんの生活費などで預り金は
死亡日時点で600万円程度にまで減っていたとのことです。
 しかし、この「600万円程度」というのもはっきりとしない様子でした。

 このような経緯で、亡くなる直前から相続のことは心配されていたそうですが、
やはり通夜の席で問題がおこりました。

 「おばあさんの口座を見せて欲しい」
 「その残高によっては、遺産分割を考えさせてもらいたい」
 と同じく相続人である、伊藤達也さん(伸子さんの亡き兄の長男)に詰め寄られたのです。
(ちなみに、ヨシノさんの相続人は伸子さんと達也さんのお二人です)
 元々あまり良好な関係ではありませんでしたが、この一言で両者の溝は決定的なものになりました。

ヨシノさんは、預金の他に2000万円の評価がつく土地を所有していました。
伸子さんは、達也さんに対して、「生前ロクにヨシノさんの面倒を見なかったのに・・・」
との悔しい思いもあったようですが、「過去のお金の出入りを達也さんに見られるくらいなら、
土地の権利を放棄する」と、自ら不公平な分割協議案を提示されました。
その内容は「土地は達也さんに相続してもらって構わないから、預金はこのまま残金を相続させて欲しい。」という内容のものでした。

もちろんセンターとしては、入出金履歴を出して、自己資産との照合・再精査も提案しましたが、
伸子さんは「そこまではしたくない」ということでした。

達也さんの希望も「土地の相続」であったことと、預金の総額が多くても数百万程度であったことを
達也さんが事前に把握していた事が幸いし、お二人の遺産分割は合意に達しました。
ヨシノさんの生前に、伸子さんが後見人として、きちんと被後見人の資産と自己資産を区別して
管理していれば・・・と悔やまれます。

(本文中のお名前は全て架空のものです)

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