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相続コラム

2024/09/17 相談事例

453、唯一の相続人が認知症

子供のいないご夫婦がいました。奥様は数年前から認知症を患っており、施設で暮らしていました。旦那様は毎日のように、自宅と施設を往復し、甲斐甲斐しく奥様のお世話をしていたそうです。しかしそんな中、旦那様が急死しました。

 

旦那様の相続人は、奥様と、旦那様の妹さんのお二人。

妹さんは遠方に住んでいたこともあり、煩雑な相続の手続きをやる事が出来ないからと、相続放棄をすることを選択されました。妹さんは家庭裁判所へ相続放棄の申立をされ、家庭裁判所もこれを受理しました。

これで妹さんは、相続人で無くなったので、奥様が唯一の相続人となりました。しかし、奥様は認知症が酷く、自身の夫が亡くなったことを認識できない状態です。そこで、奥様の代わりに動かれたのが、奥様の弟であるAさんでした。

 

Aさんは相続の手続きを進めようと、市が行なっている相談会や、司法書士事務所、税理士事務所と色々なところへ相談に行かれました。

ところが、Aさんは相続人ではない為、手伝うことは出来ないと門前払い。

相続手続きが思うように進まず、Aさんは焦りました。

なぜならば、旦那様は不動産や預貯金、株など多くの財産を残されていたので、亡くなってから10ヶ月以内に、相続税の申告と納税をしなくてはいけなかったのです。

また、奥様の普段の生活費や医療費を、お支払いになっていた旦那様がお亡くなりになったため、それらの支払いもAさんが立替えなければならない状態でした。

さらに、旦那様がお住まいになっていたご自宅が空き家状態になっていた為、管理が行き届かず、近隣の住民から苦情も来ていると、問題は山積み。

 

Aさんはやっとの思いで相談に来られました。

 

まず、認知症になっている奥様に、後見人をつける必要があることを説明しました。

後見人がつけば相続手続きが終わった後も、奥様のお金の入出金や、相続することになる不動産の管理を後見人がしてくれることになります。

Aさんにもご納得いただき、司法書士に後見人の選任の申立てをしてもらいました。

 

続いて考えなければならないのは、相続税申告について。

本来は後見人がついたのちに、後見人に相続税申告のことをやってもらうことになりますが、その段取りでやっていては申告の期限に間に合いません。そのため、後見人をつける手続きと同時進行で、相続税申告の準備も進めていくことにしました。

ここで、相続を進めていくのにかかる費用は、誰が負担するのかということが問題になりました。司法書士に調べてもらい、後見人を申立てする際の司法書士の費用は、申立人であるAさんの負担になることがわかりました。それ以外の相続にかかった費用については、Aさんが相続人である奥様の立替をしているだけと解釈し、後見人がついたのち後見人に清算してもらえるとの見解になりました。

 

さっそく手続きに入り、数ヶ月後、弁護士が後見人に選ばれました。その後、それまでにやっていた相続税申告の為の調査や、金融機関や不動産の手続きができるように揃えておいた手続書類などを後見人に引き継ぎました。

ここまでくるのに、旦那様が亡くってから9ヶ月が経っていました。

最終的には、後見人が選ばれるまでの間に色々と準備ができていたお陰で、相続税申告の期限を過ぎることなく、申告をすることができました。またAさんがそれまでに支払っていた今回の相続に関わる費用についても、後見人に請求し、Aさんのもとにお金が返ってきました。

 

相続の手続きが無事終わったこと、今後の奥様の財産について後見人が管理していただけることで、Aさんはやっと安心されたようでした。

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