相続コラム
2026/02/16 相談事例
おひとり様の貸金庫
連携先のNPO法人(高齢者生活支援団体)を通じて、中嶋さんより相続手続きの依頼があったのは、昨年11月のことでした。
独身で一人暮らしだった長谷川さんの相続人は、妹の中嶋さんの他、甥3名と姪1名の計5人ですが、東京・愛知・埼玉・茨城・山形と点在しています。全員が青森の土地に馴染みが無かったことと、相続手続支援センターの存在を知らなかったことで、まず信頼して頂くこと、その後の手続きの説明や、必要書類の取得にかなりの時間を要しました。
しかも、銀行に貸金庫があることが判明し、自筆証書遺言書がある可能性(公正証書遺言は公証人役場で検索を済ませていました。)が出てきました。貸金庫の開閉には原則、相続人の立ち会いが必要ですが、73歳の中嶋さんは体力的に自信が無いとのことで、センターで代理人を引き受けました。
銀行との打合せの中、相続人お一人が放棄手続をされるとのことで、放棄の証明書発行まで待機しました。自筆遺言書の有無を確認しなくてはマンションの相続登記も、他の預貯金の解約もできない状態で1か月半が過ぎました。
幸い甥・姪の二人が立ち会うとのことでスケジュール調整し、貸金庫開閉の日を迎えたのは、4月下旬でした。深さ10cmの箱には丁寧に梱包されている茶封筒が11個、満杯状態で入っていました。中嶋さん他の相続人のために銀行に許可を得て、すべての状態を撮影しながら一つずつ開封しました。それぞれの封筒にはナンバーが書いてあり。その中にも封筒があり日付が記されています。
8番までの封筒に入っていたのは、高級ブランドのスカーフ、指輪、アクセサリー類でした。40点以上になりましたが、どれもほぼ未使用状態です。9番と10番には写真・手紙・チケット類が、11番にはマンションの登記済権利証が入っていました。
写真に写っている若き日の男性を見て、その場にいた全員が驚きました。某有名人です。チケットにも、手紙の差出人にも、エアメールの葉書にも、その方の名前が記されていました。その方からのプレゼントだった事、とても大事にしていた事、その人に思いを寄せていた事はその場にいた全員が肌で感じました。
某有名人はすでに他界しており、また長谷川さんも子供を産んだことは無いと中嶋さんから聞いていましたので、世間を騒がすようなことにはなりませんでしたが、私は同じ女性として、『果たして長谷川さんは、このような大事なものを甥や姪、相続人に見せることを望んでいただろうか』と考えてしまいました。
結局、自筆証書遺言は無かったので、遺産分割協議をしてまもなく手続きが終了しました。
中嶋さんやNPO法人の方のお話しでは、長谷川さんは常に前向き・気丈な方で、病気になってからも回復することしか考えていなかったそうです。そのため、いわゆる終活には興味を示さず、相続に対する準備はほとんどなされていませんでした。
相続人がいる方でも、お一人暮らしの方が亡くなった場合、相続手続には時間がかかります。また、生前の生活の様子やその方の考えは、想像することしかできないことも多々あります。このような事例を多くの場面でお話し、エンディングノートや遺言書に興味を持っていただくことも、相続手続支援センターの大事な業務だと思っております。
(504)







通話無料
メールでお問い合わせ
