相続コラム
2025/07/07 相談事例
女のバトル!『内縁の妻』と『本妻』との遺産分割協議
加藤郁子さんは、20年以上前から、文雄さんと二人暮らしをしていました。
はたから見ると、いたって普通の夫婦のようなこの二人ですが、実は戸籍の上では婚姻関係にありません。いわゆる『内縁関係』です。
文雄さんには、戸籍上、妻がいました。もう何十年も前から夫婦関係は破綻していましたが、事情があって離婚はしていませんでした。
5年ほど前、郁子さんは、文雄さんから遺言書を渡されました。
『俺が死んだら、家土地はお前が相続できるように遺言書を書いておいた。相続でお前に苦労させることはないから心配するな』
そんな文雄さんが亡くなり、郁子さんは、はじめてその遺言書を開きました。
遺言書にはこう書かれていました。
『全財産の2分の1を郁子に、残りの2分の1を○○(戸籍上の妻)に相続させる。
具体的な分け方については、二人で協議すること』
(え?わたしが、文雄さんの妻と遺産分けの話し合いをするの?)郁子さんは目が点!
途方に暮れた郁子さんは、知人の紹介で当センターに来られ、相続手続全般を依頼されました。
とはいえ、具体的な遺産分けの話し合いについては、当人同士で行わないといけません。
内縁の妻(郁子さん)と戸籍上の妻では、どう考えても、穏やかな話し合いができるはずがありません。案の定、遺産分けの話に入る以前に、女のバトル勃発です。
郁子さんは、遺産分けが決まるまでに、半年以上の時間を費やしてしまいました。
確かに郁子さんは、文雄さんが生前言っていたように、家土地を相続することができました。しかしその道のりは、郁子さんにとって、まさにいばらの道でした。
せっかく文雄さんが遺してくれた遺言書でしたが、『郁子さんに苦労させたくない』という文雄さんの思いは、かなわなかったことになります。
相続手続が終わり、郁子さんは悔しそうに言われました。
『文雄さんが遺言書に、“家土地を私(郁子さん)に相続させる”って書いてくれていれば、こんな苦労はしなかったのに』
遺言書を遺す際には、「実際に相続が起こったときに、遺された人が苦労せずに相続手続ができるかどうか」ということを、注意しないといけませんね。
(参考)遺族年金は「内縁の妻」にも受給権はありますが、「本妻」が先に申請を出してしまった場合の受給権には注意が必要です。 (483)