お父様を亡くされた美子(仮名)さん。親戚の行政書士に相談したところ、対応しきれないので他の事務所に行くように言われ、当センターに来社されました。
お話を伺うと・・・「美子さんの母は数年前に他界。兄の進(仮名)さんは重度の障害があり、小学生のころから施設に入所しそこで暮らしている。亡くなった父の孝(仮名)さんには、不動産収入(貸家と駐車場)があり、また生命保険にも加入。まったく字を書けない兄には成年後見人の申立が必要と行政書士に聞いた。金融機関の口座も凍結され、相続税もかかるようだ。何から手を付けたらよいのか分からないので、1つ1つ教えてほしい。」といった内容でした。
概略のお話を伺っただけでも、主な手続きとして、①準確定申告、②貸家及び駐車場を借りている人たちへ各種通知を出すこと、③多数加入の保険の手続き、④後見人選任の申立、⑤遺産分割(今後の不動産管理含む)、⑥相続税申告があります。
美子さんには、いつまでに何をすればよいのか今後のスケジュールをお話しし、約3時間にわたる初回無料相談は無事終了。それから長いお付き合いが始まりました。
美子さんは数年前、病に倒れたお母様を看病するため、看護師の職を辞し、母の死を看取りました。その後、お父様に癌がみつかり、看病しながら父に代わってお兄様の施設に週2回のペースで通うことになりました。
その後、高齢で一人暮らしをされ、東日本大震災で被災された伯母様を自宅によび寄せ、同居生活をスタート。ほぼ同時期、隣家で飼えなくなった犬1匹を預かることになり・・・。まさに人のために時間を費やしてこられました。その間、美子さんご自身は様々なストレスからうつ病を発し、自らも通院しながら日々過ごされていたとのことです。
美子さんと密に連絡を取り合い、1つ1つ手続きを進めていくうちに、いつの間にかこちらが伺う前に色々と情報提供して頂くようになり、遺産分割についてもご相談頂くようになりました。相続人もしくは弁護士以外は遺産分割協議には入れないこと、また後見人制度を使うと、ほぼ法定相続分の分割となってしまうことについてはお伝えしました。
兄進さんは、施設に入っていれば生活費について今後の不安はほぼ無いけれど、美子さんは独身で今後もどうなるか分からない。
同居の伯母さまのお世話をしながら、今回の相続が落ち着いたら働いて収入も得ていかなければならない。父が遺した不動産管理や兄進さんのこともあり、出来れば少しでも多く遺産相続しておきたい、というお考えでした。もし私が美子さんでも同じことを考えていたと思います。
それはそうと、後見人の選任は家庭裁判所に任せることにしていたため、どのような方が選任されるのか不安でなかなか申立てに行けない美子さん・・・。相続税申告期限のこともあり、背中を押して家庭裁判所にも同行しました。
それから約2ケ月後、後見人に司法書士が決まりました。大変気さくな方で、なんでも相談することが出来、美子さんの遺産分割に対する考え方も理解して下さり、美子さんのお考えに限りなく近い分割(案)を家庭裁判所へ提出。
結果的に、ほぼ要望通りの案を通すことが出来ました。
また、相続税申告も無事に終えることが出来ました。
相続に関する手続きが全て完了した後は、美子さんご自身の確定申告、貸家の売却、そして今後の美子さんのライフプランについても対応させて頂き、2年程お付き合いが続いております。
相続税の申告もあり、一歩踏み込んだお付き合いとなりましたが、「相続」とは、亡くなった方の想いや財産を承継していきつつ、遺された者への人生に大きな影響をもたらすことを改めて感じさせられました。