418、3度目の正直

2023年10月23日

新しい年を迎え、最初のご相談が84歳のAさんでした。
「秋に87歳の夫を見送りました。夫は手書きの遺言書を遺しており、葬儀後に家庭裁判所へ行くように言われていました。その言葉通りに家庭裁判所に行き、遺言を開封するまでの説明を聞きました。簡単に開けてもらえると思っていましたが、遠方の戸籍を郵送で集めたり、裁判所の書類に記入したりという作業が、高齢の私には理解できませんでした。家に帰ってからは、遺言を開封したいという気持ちと、『どうにでもなれ』という気持ちが葛藤していました。さらに『誰に相談していいのかが分からない』と言う悩みがプラスされ、生きるのもイヤになってしまいました。恥ずかしい話です。それで思い切って四十九日に葬儀社の方に相談しました。すると、センターを訪ねるように言われたのです。夫の遺言書を開けるお手伝いをお願いできませんか?」

 「はい、大丈夫ですよ。お手伝いいたします。」

 「夫の手書きの遺言書は10年ほど前に渡され、大切にしまっておりました。相続人は私の他に息子が2人います。長男は私たち夫婦と同居、次男は車で5分ほどのマンションに住んでいます。夫の財産は、自宅の土地建物と次男の住んでいるマンションです。預貯金は3カ所の金融機関にあります。」

 Aさんのお話しは30分たっても止まりませんでしたが、相槌を打ちながら聞いていました。他愛ない話の中から、家族や遺産、そのほか故人にまつわることをお聞きするチャンスがあるからです。今回もその予感が的中しました。同居の長男には、バツが3つほどついていて(3回の離婚)、それぞれの奥様との間にお子様が1名ずついらっしゃるとのことでした。

 「夫の残した遺言の内容は、遺言を預かったときに聞いています。自宅の土地建物は長男へ、次男の住んでいるマンションは次男へ、そして預貯金はすべて私へと言っていました。」

 Aさんは話を続けます。
 「10年前はこの内容で良かったのです。夫が遺言を書いた当時、長男は3回目の結婚をしていました。長男夫婦と孫と私たち夫婦の3世代で同居していました。ところが夫が体調を崩し入院した頃、長男が離婚。嫁が孫を連れて出て行ってしまったの。だから、夫の遺言どおりに長男が自宅を引き継いだとしたら、長男が死んだときは大変なことになるでしょう。だから遺言ではなく遺産分割協議にしたいの。できるかしら?長男も次男もそのことには賛同してくれたのだけど。」

 「相続人全員が同意するのであれば、遺言書ではなく、遺産分割協議で財産分けをすることは可能です」とお伝えしました。Aさんと2人の息子さんは、その日の夜に話し合いをしてくださいました。そして、その結果は…
 1)手書きの遺言書は父の気持ちがしたためてあるので、家庭裁判所で検認、開封
 2)その内容を尊重して、相続人3人で話し合いをする
 3)話し合いの結果を遺産分割協議書として残す
 ことになりました。

3月。ようやく、手書きの遺言書をあけることができました。内容は先にAさんが言ったとおりでした。この内容を尊重しながら、3人は遺産分割協議を行いました。
 結果、次男のマンションは次男へ、自宅の土地建物を含む残りの財産はすべてAさんへ、と決まりました。

 遺産分割協議書を作成する段階で、長男が「私は何も相続しないことになるが、自宅の土地建物を私に引き継がせてくれようとした父の気持ちを遺産分割協議書内に反映させてほしい」との要望がありました。そのため行政書士に依頼し、遺産分割協議書の文頭にこのような文言を入れました。

 被相続人○○○○の自筆証書遺言を △△家庭裁判所 □□支部にて検認し、内容を確認した。
 その結果、自筆証書遺言の内容を尊重しつつ、長男が引き継ぐ財産については遺産分割協議を行うことに対し相続人全員が同意をした。よって下記のとおりに遺産を分割し、相続することとする。

 長男を含む相続人全員が、この文書に対して納得したうえで、署名、押印を済ませました。長男は「自分は何も相続しないということを理解しているが、仮に私が亡くなったときに亡父の遺産分割協議書が出てきたと想定して、私の家族が『なぜお父さんが財産をもらわなかったのか』と争わないようにこの文章を追加したかった」とおっしゃっていました。

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