依頼者Aさんが奥様と一緒に不安な顔をされて、センターへいらっしゃったのは年明け早々のことでした。
亡くなったのはAさんの実の兄で、配偶者もお子さんもいない兄弟姉妹間の相続でした。
相続人は姉が2人、弟がAさん含め5人いますが、生前よくお付き合いされていたのは依頼者のAさんお一人でした。
お兄さんは自筆の遺言書を残されており、その遺言書を家庭裁判所へ検認の申立をするために色々調べた結果、かなり大変な事だと分かり、相談にいらっしゃったのです。
「戸籍の収集が兄弟姉妹間の場合どうしても広範囲で通数が多くなるので、一般の方だと大変苦労されます」と説明し、Aさんも納得された様子でしたのでご依頼を受けました。
1ヶ月半程して、検認の申立が済み、その後検認の日も決まりました。
検認の当日、通知を受けた兄弟姉妹が全員集まり、皆さん久しぶりなのか和気あいあいと近況等をお話しされていました。法廷に入るまでは・・・
検認が済み、皆さん法廷から出て来たのですが、それまでのにこやかな顔は失せ、誰言うとなく「こんな遺言書は認めない」とか、「親父の時は遠慮したけど今回は・・・」等不満が噴出しました。
開封した遺言書の内容は、「Aさんがすべて相続する」というものでした。
後日、Aさんから遺言書のとおり手続きをしてほしいと連絡があり、引き続き進める事になりました。
お兄様は多少遺言について調べたらしく、遺言執行者もAさんに指定してあり、すべてこのまま順調に進むと思っていました。
お兄様はお父様から受け継いだアパートを経営されており、遺言書でも「土地を含むひかり荘をAさんへ相続させる」と書いてあったのですが、不動産を調査すると、何と建物が5棟あり法務局の見解では、アパートのひかり荘は5棟のうちどれを指すのかわからないとのことでした。
このままでは登記は難しく、今さら検認の日から仲違いしている相続人に協力も得られるはずもありません。そこでなんとか疎明資料を集めたところ、5棟分の賃貸契約にそれぞれ第1ひかり荘、第2ひかり荘、第3ひかり荘、第4ひかり荘、第5ひかり荘と記載されていることが分かりました。
さっそく司法書士に相談して法務局と掛け合った結果、無事5棟ともAさんの名義に変更できました。
Aさんも大変喜ばれました。他の兄弟姉妹とは時間を掛けて関係は戻しますとおっしゃっていました。
Aさんご夫婦にはお子さんがいませんので、その後アドバイスをさせていただき、遺言書をお互いに作成されたのは、言うまでもありません。